光で物を操り分析! 光ピンセットの世界

2019年7月24日 大阪会場にて収録

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光のものを動かす力「光圧」

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光ピンセットは何に使えるの?

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光で非常に小さいものを捕まえるためには?

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関心ワード
  • タンパク質 、
  • 電子 、
  • ドラッグデリバリーシステム 、
  • ナノ 、
  • 光 、
  • 光ピンセット 、
  • 分子 、
  • 粒子 、
  • レーザー

講義No.g009850

光のパワーで物質を操作! 「光化学」が変えるナノワールド

ミクロの世界で「光圧」パワーを活用

粒子と波の両方の性質を持つ光と、物質との相互作用を扱う化学が、「光化学」です。光が物質にあたって反射や吸収されるときに、「光圧」とよばれる圧力を表面に及ぼします。ピコニュートン以下の大変弱い力のため、人間が感じることはできません。しかし、ミクロやナノレベルの微粒子にとっては無視できない力なので、レーザーのように強い光を対物レンズで集光して増強すれば、その光圧で細胞のように小さな物質を光で捕らえることができるのです。

光ピンセットの弱点

「光ピンセット」と名付けられたこの技術を使うと、水中に溶けている物質を捕まえて成分を調べたり、血液中の赤血球を捕まえて移動させたりといった、ミクロの作業ができます。しかし、光圧は捕まえる対象物が小さくなると弱まるため、マイクロメートルサイズの赤血球などは捕まえられても、もっと小さいナノメートルサイズのタンパク質やDNAは捕まえられません。また、光圧を上げようとレーザービームを強くすれば、対象物が傷ついてしまいます。そこで、どんな大きさの分子でも捕まえて自由に操れる光ピンセットをめざし、強い光圧を得る手段として注目されるのが「プラズモン励起(れいき)」を応用する方法です。

光で金属の電子の振る舞いを変える

金属に、ある波長の光を当てると、金属中の自由電子がさざ波のように集団で運動する現象をプラズモン励起といいます。貴金属の表面のプラズモンを励起して増強電場を形成すると、従来の光ピンセットよりはるかに強い光圧が得られ、小さな粒子でも捕まえることができます。また、ナノメートルサイズの空間で自由度の高い捕捉が可能となるため、タンパク質や核酸などを自在に動かすことができます。
これは、生体分子を識別するバイオセンシング技術や、薬を適切に体内に届けるドラッグデリバリーシステムの研究への応用が期待できます。光化学の進化によって、光の持つ新しい可能性がさまざまな分野へ広がろうとしているのです。

この学問が向いているかも 光化学、分析化学、分光学

大阪市立大学
理学部 化学科
講師 東海林 竜也 先生

メッセージ

誰にでも得意な科目や、どうしても好きになれない科目があるものです。大学受験時に苦手な科目を敬遠するのは無理もないことですが、そこでその分野と縁を切ってしまわないようにしましょう。なぜなら、学問にはすべてと言っていいほどつながりがあって、異なるいくつもの分野が融合してできた新しい学問が日々どんどん生まれているからです。
大学での勉強や研究では、さまざまな分野の知識が役立ちます。興味のアンテナを絞ってしまうことなく自主的に動いて、柔軟に多くのことを吸収してください。

先生の学問へのきっかけ

幼い頃から豊かな自然と触れ合って大きくなりました。光の不思議な力に興味を持ち、きちんと光のことを勉強したいと思うようになりました。中学卒業後は群馬の工業高等専門学校に進学し、環境工学を専攻します。そして元素や分子のことを解き明かせれば、この世界がわかると考え、研究者をめざして大学院では化学の道に進みました。そこで学んだのは、化学を学ぶには物理学や数学が絶対に必要なこと、さまざまな学問はつながり合っているということでした。現在は、光を化学の視点から研究し、光の隠された力を解明しようとしています。