大阪医科薬科大学の教員による講義動画

薬や食品を設計する:溶かして予防医療に貢献

関心ワード
  • ウコン 、
  • 機能性食品 、
  • 吸収 、
  • 薬・医薬品 、
  • 健康 、
  • 食品 、
  • 食品添加物 、
  • 分子 、
  • 溶解 、
  • 予防医療

薬や食品の吸収率を高める! 水に溶けないものをどう溶かすか?

吸収される有効成分は一部だけ

医薬品や食品は、摂取しても実際に吸収される有効成分はほんの一部で、多くは体外に排出されてしまいます。そこで有効成分の吸収率を高めるために、薬などに含まれる分子を水に溶けやすくする研究が行われています。
吸収のために溶解性を高める理由を、釣りに例えます。溶けた分子は魚、吸収は釣りだとイメージしてみましょう。そもそも体という川に魚が生息していなければ、釣って捕獲することができません。もし川が魚に適した環境でない場合は、魚をコーティングするなどして環境に対応させ、生息数を増やすことで、釣りやすくなります。

水に溶けないものを溶かすには?

分子には、水に溶けるものと油に溶けるものがあります。例えば二日酔い防止の飲料に使われているウコンの有効成分であるクルクミンの分子は、水に溶けにくく、耳かき1杯分のクルクミンは、浴槽1杯分の水を使っても溶けません。そのため大量に摂取しても体内にはほんの少ししか吸収されないのです。しかしクルクミンの分子を、脂肪の吸収をゆるやかにする食品添加物と分子レベルで組み合わせると水に溶けやすい集合体を形成します。クルクミンの周りを水に溶けやすい分子がコーティングしてくれるからです。すると体内により多くの魚が生息する状態になり、釣りやすくなります。つまり吸収できる量が増加します。
分子を組み合わせる手法はさまざまです。お酒と水が混ざりあうことを利用して、水に溶けにくい化合物をアルコールに溶かし、添加物を溶かした水と混ぜ合わせて、分子を組み合わせることも可能です。

溶解性を高め予防医療に貢献

溶解性を高める技術は、予防医療にも活用できます。現代社会における課題のひとつが、年々上昇している医療費です。そのため、病気になる前に機能性食品などで健康を保つ予防医療の重要性が増しています。有効な成分を少量で摂取できる技術があれば、少ない原材料でより多くの薬や食品を開発可能です。その結果、多くの人が予防医療に役立つ商品を手に取りやすくなるのです。

この学問が向いているかも 薬学、製剤学

大阪医科薬科大学
薬学部 薬学科
教授 戸塚 裕一 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

進路選びでは偏差値だけに目を向けるのではなく、研究内容に注目して大学を探してもいいと思います。取り組んでみたいと思える特徴的な研究が見つかれば、どのような大学に行ってもあなたの力を発揮できるはずです。
それが薬学の場合、薬学部に入ると薬剤師にならなければいけない、と思うかもしれません。しかし薬学部の知識は病院や薬局だけでなく、医薬品や化粧品、さらに食品の開発現場でも必要とされています。生産と研究の現場をつなぐ架け橋となるような研究もあるので、興味を持ってもらえるとうれしいです。

先生の学問へのきっかけ

もともとはコンピュータなどに興味があり、工学部に進学しようと思っていました。しかし薬にも興味を抱き、工学と薬学のどちらを専攻するか迷いました。医学部で学ぶ道もありましたが、私は血を見ることや動物を使った実験が苦手だったため、自分の適性を考慮して、薬学部で工学寄りの研究をしようと決めました。研究テーマのひとつである溶解性改善技術は、ニッチですが現場で必要とされている内容だと思い選びました。医薬品会社など現場との結びつきが強いため、ものづくりにも似たやりがいを感じています。