岐阜医療科学大学の教員による講義動画

身近な毒って、なに? ~自分達の身体を毒から守ろう~

関心ワード
  • 患者 、
  • 誤飲 、
  • 情報 、
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  • 中毒 、
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  • 薬剤師

中毒への対処や予防、創薬などに幅広く貢献する薬剤師は毒物の専門家

地球上の広範囲のものに存在する毒物

人間にとって毒となる物質は、洗剤や乾燥剤、殺虫剤といった家庭用品や、マムシやハチなど毒を有する動物、家庭で栽培される花や雑草といった植物、放射性物質など、地球上にある広範囲のものに含まれています。そして、中毒症状を引き起こした患者は、毎日のように医療現場に運ばれてきます。時には命に関わるケースもあり、その際に医師が頼りにするのが薬剤師です。

原因物質の特定や適切な処置を考える薬剤師

薬剤師は、中毒の原因物質をいち早く特定し、体内で何が起こるか予測して適切な処置を考えます。例えば、幼児による誤飲が多いボタン電池は、新しいか否かで処置がまったく異なります。新しいボタン電池は、体内で電流が発生して胃や腸などに穴を開ける場合があるので、停滞した時には直ちに摘出手術などの処置をします。古い電池なら通電しないので、下剤投与による排泄促進で対処でき、一般的に手術は不要となるのです。
また、大量に食べると中毒症状を起こすギンナンは、かつては青酸物質が含まれると考えられていました。今はギンナンの毒成分が解明され、ビタミンB6を投与することで症状が治まることがわかっています。毒物に関する正しい情報を持っていることが、患者の負担を軽減し、命を救うことにつながるのです。

情報の充実が予防活動や創薬へ

中毒は、家庭内でも高齢者や幼児の誤飲によるものが多く発生しています。特に身近にある園芸用の花や雑草などの植物は、子どもが遊びで口にするケースや、根菜類などと間違えるケースもあります。それらにどんな成分が含まれ、人間にどのような影響を与えるのかを解明し、データベースを整えることが大切です。さらに、在宅へ訪問する薬局薬剤師などが自由にアクセスできる環境が整えば、誤飲などによる中毒を未然に防ぐための活動も活発になるでしょう。まだ発見されていない毒物もたくさんあります。そうした毒物は、創薬にも役立ちます。毒を知ることで多くの人の役に立つことができるのです。

この学問が向いているかも 薬学、医療薬学、毒物学、臨床中毒学

岐阜医療科学大学
薬学部 薬学科
教授 森 博美 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

高校生のうちにぜひ、好きなことや得意なことを見つけてください。どんな小さなことでも一生懸命将来に向かって取り組んでいけば、「これについては、この人に聞けばわかる」と認識されて人間関係が広がり、人脈へとつながります。私は薬学の前に、電子工学を学んでいましたが、その知識を現在の研究の分析などで活用しています。無駄になることは何ひとつありません。むしろ違う分野の知識を持っていた方が、新しいアイデアや発見ができる可能性があります。勉強に限らず、どんなことでもいいので、存分に取り組んでみてください。

先生の学問へのきっかけ

電子工学系のエンジニアをめざして工業高校に通っていたのですが、ちょうどその頃に扁桃腺を切除することになりました。術後出血がひどく苦しかったのですが、医師や看護師の献身的な姿に感謝し、感動したのです。また、幼い頃から薬を飲むことが多く、自分の体について知りたい、医療現場で貢献したいという思いが強くなり、薬学の大学に進学しました。大学卒業後は病院薬剤師として、38年に渡って中毒や漢方の研究に励みました。定年後、調剤薬局に勤務したのち、学生に中毒の対処法や予防法を伝えたいと大学に移り、今に至ります。